あらすじ

近代文学研究者、幌田紫陽花。  荷風の「孤高」と安吾の「堕落」を都合の良い盾にし、母を看取れなかった十九年前の罪から目を逸らして生きてきた。  ある日、講演壇上で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは時代も定まらぬ異界の遊郭「朧月楼」だった。  十二歳の禿「ユラ」として生きる彼女の前に現れたのは、樟脳と煙草の匂いを纏う永井荷風と、酒と覚醒剤で体を削る坂口安吾だった。  史実では交わることのなかった二人の巨人が、同じ座敷で孤独の刃を突きつけ合う。目の前で繰り広げられる暴力と体温、紙の上の知識が焼き尽くされるほどの生の叫び。  薄雲の三味線が響き、雨が降りしきる中、傍観者であることをやめたユラは何を見届けるのか。  これは失われた母への悔恨と、言葉にならぬ他者への祈りが静かに交差する、魂の救済と再生の物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/10/06
  • 現在の作品【架空文豪小説】荷風と安吾が斬り結ぶ夜 ~交わることのない二つの孤独~