あらすじ

仕事を辞めた真帆は、叔母・節子の小さな喫茶店を手伝い始める。窓際の席には、客が「今日、よかったこと」を一行だけ残すノートがある。真帆自身は、まだ何も書けない。 退職して時間を持て余す柏木は、雨の帰り道に傘を畳む音を残す。進路の決めていない高校生・青葉は、熱を出した母の代わりに、初めてうまく焼けた卵焼きを書く。妻を亡くした常連の村田は、孫に久しぶりに下の名前で呼ばれたことを、空のカップの横に記す。誰かの数行を読むうち、真帆も自分の日を振り返るようになる。 そんなある日、ノートに「よかったことは、ありません」とだけ書かれていた。節子は消さなくていいと言う。翌朝、真帆は窓際にカップを二つ並べる。書き手の女性は名を告げずに座り、昨日の行の下に「書けない、と書けた」と足す。真帆も初めて自分の行を残す。 悲しみはなくならない。なくならなくても、誰かとお茶は飲める。何も書けない日も、ここにいていい。小さな喫茶店で心がほどけていく、五つの物語。

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エブリスタ2026/10/05
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