あらすじ
王太子アルベルトの婚約者として十年間、王妃教育だけでなく王太子府の実務まで支えてきた公爵令嬢エリシア。
ところがある夜会で、アルベルトは男爵令嬢ミレイユを傍らに置き、「君は冷たく、書類ばかり見ている。王太子妃には相応しくない」と一方的に婚約破棄を告げる。
エリシアは泣きも縋りもせず、ただ一言。「承知いたしました」
そして確認する。
「では、私が婚約者として担当していたお仕事も、すべてお返ししてよろしいのですね?」
翌朝、王太子の執務室に届けられた十一箱の書類。未処理案件、四百七十八件。
そこで初めてアルベルトたちは知ることになる。
外交文書の要約も、予算案の確認も、各省との調整も、貴族への根回しも――“細々した仕事”だと思っていたそれらを、誰が支えていたのかを。
一方、十年ぶりに自由になったエリシアには、彼女の能力を以前から見抜いていた隣国の第二王子から声がかかる。
これは、誰かのためだけに生きてきた令嬢が、自分の名前で人生を取り戻す物語。