あらすじ
一九九九年、お盆の夜のことだ。霧生市望ヶ丘の、若者向けシェアハウス「のぞみ荘」で、住人の四人が殺された。全員、まだ二十代。夢を追って都会に出てきた子たちだった。犯人は、いまだに捕まっていない。
ここまでなら、どこにでもある未解決事件だ。だが、この事件には、ひとつだけ、妙な点がある。
犯人は、四人を殺したあと、すぐには逃げなかった。一晩、いや、それ以上、その家に居座った。冷蔵庫を開けてアイスを食べ、台所で手を洗い、玄関で靴下を履き替え、そして――被害者のパソコンを、ずっと、触り続けていた。血まみれの手で。まるで、もう一晩、その部屋に住むつもりみたいに。
犯人は、あの画面の向こうに、何を見ていたのか。
深夜の底辺配信者・三上は、その一点に、ずっと引っかかっていた。定説では、近所の劇団のサイトを見ていたことになっている。けれど、本当に、そんなものだったのか。犯人が覗いていたのは、もっと別の、どこにも記録されない、うす暗いページだったんじゃないか。
今夜、彼は、誰も見向きもしないこの謎を、視聴者たちと、考察してみることにした。
――これは、その配信者が残した記録である。