あらすじ
長く続いた戦を終わらせるため、サライ伯家の娘カタリンは、敵対していたヴェレシュ家へ嫁ぐことになった。
ところが婚礼を前に、カタリンは病に倒れる。
命は助かったものの、長い旅に耐えられる保証はない。
婚姻を取りやめれば、ようやく成立した和睦が崩れるかもしれない。
そこでサライ家が選んだのは、ひとりの女優をカタリンの代役として送り出すという危険な策だった。
選ばれたのは、十七歳の劇団女優レーカ。
顔立ちは似ていても、育った環境も、知識も、振る舞いも違う。
衣装や作法を覚えるだけでは、本物のカタリンにはなれない。
レーカは本人と話し、家族との関係を観察し、「カタリンならなぜそうするのか」を学んでいく。
やがて本物のカタリンは自らの名前と人生を手放し、レーカはその名を背負ってヴェレシュ家へ向かう。
舞台なら、幕が降りれば役は終わる。
だが、この役に幕はない。
女優だった少女が、他人の人生を演じ続ける物語。