あらすじ
「契約の満了まで、あと三十日だ」
冷酷と噂される灰狼公爵から離縁の準備を告げられた瞬間、リゼットは前世を思い出した。
ここは、読んでいた恋愛小説の世界。夫は聖女に討たれる最後の敵。そして、悪女と呼ばれる契約妻――自分は、その十日前に死ぬ。
離縁どころではありません。先に、二人とも生き延びなくては!
原作通りに落ちかけた吊灯を止めると、夫は怒るどころか「助かった」と礼を言った。怖い顔で猫に道を譲り、妻の部屋へ入る前には許可を待つ。読んだ物語と、目の前の人が違う。
では、聖女が恐れた黒い影と、教会が届ける白い薬は、本当は何なのか。
リゼットには、特別な魔法はない。頼れる原作知識も、聖女が見聞きした物語の一部だけ。
夫と話し、医師と調べ、恋敵のはずの聖女に会って、彼女は破滅の裏側へ踏み込んでいく。
その一方、誰にも頼れなかった公爵が、妻にだけ願いを口にし始めた。
「約束は守る。そのうえで、明日も会いたい」
死亡まで三十日。離縁まで三十日。
契約を終わらせるために夫を救うはずが、終わったあとも一緒にいたくなってしまった。
これは、悪女と悪役の結末を書き換え、自分の意思でもう一度夫婦になるまでの物語。
全二十四話完結、ハッピーエンド。