あらすじ
群馬県にある、水と緑と詩のまちの公立中学校に通う三年生・空野恒一の夢は「無職」になることだった。誰にも命令されず、期待もされない自由——それこそが最強だと信じていた。叔母の家で実の兄妹のように育った、売れっ子アイドル・星宮歌羽に、冗談半分で「養ってもらいたい」と言って笑う、そんな平凡な日常。
だが修学旅行中、学年ごと異世界へ召喚された恒一は、神殿での適性判定で全員が「勇者」や「聖女」といった役割を与えられる中、ただ一人だけ何も与えられなかった。ジョブ:無職。王国はそれを「異端」と断じ、恒一を隔離する。
人間界は、七つの基本属性を象徴する七つの国が均衡を保つ世界。役割を持つ者だけが評価され、居場所を得る。魔女・黒葉夜乃の手引きで脱出した恒一は、王国の庇護も、勇者パーティーの仲間も持たないまま、たった一体のスライムとともに、役割のない生き方を選び取っていく。
一方、かつて同じグラウンドに立った仲間である金崎剣翔は「勇者」として、王国が定めた”正しい”冒険を歩み始める。従姉妹の歌姫・歌羽は歌の力で戦況を支えるが、やがて魔王に攫われてしまう。「魔王を倒せればいい」——その合理性の中で、歌羽は”優先度の低い存在”として切り捨てられる。
誰にも選ばれなかった無職の少年は、そこで初めて、自分の意志で選ぶ。やがて発現するユニークスキル《零式選択(オプション・ゼロ)》——それは強さのための力ではない。選び続ける覚悟を問う力だった。
無職の少年、王国公認の勇者として進む親友、囚われの歌姫——三つの視点が交差しながら、「役割が世界を支配するこの人間界」で、恒一は何にも縛られない自分だけの選択を積み重ねていく。