あらすじ
「本日より、皆様の時間は私が預かります」
魔王ヴェスペリアに仕えた最高執行官にして筆頭執事、ノクス・アルヴェイン。 三十年続いた戦争を終わらせる和平条文を仕上げた夜、彼は執務室の床に倒れた。過労だった。
気がつくと、現代日本のブラック企業で働く会社員・宮代奏一郎になっていた。 そして――また倒れた。
病院の帰り道、公園のベンチで寝ていたジャージ姿の女性を助けたことが、彼の二度目の人生を変える。 朝比奈小夜。所属配信者六人の弱小Vtuber事務所「ゴゴイチ」の代表で、口癖は「午後一から本気出す」。 未返信の案件メール、締め切りの過ぎた請求書、崩れかけた事務所。 「執事はいらない。定時で帰る事務員ならほしい」 そう言って彼を雇った社長のもとで、ノクスは前世の段取りと礼法で箱を立て直していく。
やがて所属配信者のあいだで「事務所に本物の執事がいる」と評判が広がり、気づけば彼自身がVtuberとしてデビューすることに。 デビュー配信で紅茶を淹れ、放送事故を所作だけで乗り切った新人執事は、一夜でトレンド入りした。
録音でしか歌えない歌姫。笑わない元地下アイドル。同接三人の新人。親に活動を隠す大学生。 配信者たちの悩みに耳を傾けるお茶会の相談室。 箱の大会では、指示役(IGL)として「短く、早く、優しく」チームを勝利へ導き、 初の箱ライブでは、出演者として歌い、裏方として段取りのすべてを支える。
穏やかな敬語の執事が、ここぞという場面だけ口調を崩す。 「……覚悟しておけよ」
前世で主に休めと言われても働きつづけた男が、今度こそ仕事を分け合い、休むことを覚えるまでの物語。