あらすじ
本編『現代の付喪神は時計の姿で顕現する』へつながる前日譚。
1940年代。
戦闘機乗りの片桐義雄は、腕に1941年製のクロノグラフを巻き、戦争末期の空を飛んでいた。
その時計には、まだ誰にも届かない「声」がある。
人間には聞こえない機械の声。
傷ついた機体が訴える異変。
そして、どうしても伝えたかったのに届かなかった、たった一つの言葉。
戦闘機、整備兵、仲間たち。
限られた時間の中で、人間と機械が互いを頼りながら生き延びようとする日々を通じて、ひとつの時計に何が残ったのか。
やがてその思いは、戦後、次の世代へと受け継がれていく。
本編に登場する「現代の付喪神」が、なぜ生まれることになったのか。
戦時中の航空戦と、一人の戦闘機乗り、そして古い腕時計を描く、三世代物語の最初の一編。
機械は、声を持っていた。
ただ、その声を人間に届ける術がなかった。