あらすじ
聖女候補のフィーナは、枯れた薔薇を一輪も治せなかった。
四年働いた神殿をクビになった帰り道、彼女だけが、討伐寸前の白竜の悲鳴を聞く。
「鐘を止めろ。頭が割れる!」
前世は動物園の飼育員。今世で授かった技能〈通詞〉は、魔獣が発した声を人語として聞く力だった。
病気を治せるわけでも、嘘を見抜けるわけでもない。けれど、話を聞かなければわからない痛みがある。
黒い鎧の騎兵隊長エリオットが、剣を抜く前に三十分をくれた。
白竜オルの名を呼び、魔獣医へ訴えを伝えたフィーナは、初めて「通訳の仕事」に報酬を受け取る。
小さな〈しっぽの相談室〉を開くと、鞍を嫌がる翼獅子や、首へ触れられたくない銀尾狐が訪れるようになった。
白竜はお菓子を盗み食いし、狐は店へ来る隊長が気になるらしい。
そしてフィーナ自身も、仕事のない午後に、彼と会いたくなっていく。
一方、魔獣たちの訴えは、神殿から納められた術具と、港の帰還鐘の問題へ繋がっていた。
聖女になれなかった転生令嬢が、聞ける声を一頭ずつ拾い、自分の仕事と恋を見つける物語。
魔獣の事件と恋愛、二人のその後まで描く、全二十話の完結作。