あらすじ

大手家電メーカーのお客様相談室。苦情電話の最終窓口に、「担当の鈴木」と名乗る女性がいる。 どれだけ罵倒されても、彼女は怒鳴り返さない。ドジで、聞き間違いが多くて、電話を切ったあとにこっそり泣いている。それなのに、鈴木に当たった客は、気づけば受話器の向こうで頭を下げているのだった。 ある日、ひとりの男が「自宅の洗濯乾燥機が壊れた」と、四十七分間、丁寧で筋の通った苦情を入れ続けた。まさにその時間、男の因縁相手は、車で一時間離れた場所で殺されていた。発信元は男の自宅の固定電話で、録音も通話ログも残っている。警察は結論づける。「この通話がある以上、彼に犯行は不可能です」。 だが、鈴木だけが知っている。通話の途中で、自分が一度だけ「わざと間違えた」こと。そして男が、最後までそれを訂正しなかったことを。 十年前、この相談室にいた母が受けた一本の電話が、ひとりの殺人犯に完璧なアリバイを与えた。責められ続けた母は「ごめんなさい」と書き残して亡くなり、娘は、その同じ席に座っている。 謝らせるべき相手が、もう一度電話をかけてくる日まで。

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小説を読もう2026/10/05
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