あらすじ
十六歳の少年・冬弥は、争いごとが嫌いな、ごく普通の高校生――だった。
ある朝、通学途中で天使と悪魔の戦いに巻き込まれるまでは。
瀕死の四翼天使ラファエル。
そして、彼女を喰らおうとする漆黒の悪魔。
二人を助けようと手を伸ばした瞬間、冬弥の異能《吸収》が暴走する。
――天使と悪魔、その両方を自分の身体へ吸収してしまった。
目を覚ました冬弥を待っていたのは、空を走る謎の機関車と、胡散臭い車掌・ルシエル。
さらに、異なる能力を持つ五人の少年少女たちだった。
ラファエルを自分の身体から救い出す。
その目的を胸に、冬弥は仲間たちと機関車で天界を巡る旅へ出る。
だが、この機関車には一つだけ残酷な決まりがあった。
――次の目的地へ進むには、「大切な記憶」を切符代として支払わなければならない。
両親の顔。
友達と遊んだ時間。
幼い日に感じた喜び。
寂しさも、悲しみも、かつて自分を作った感情さえも。
前へ進むたび、冬弥の中から「冬弥だったもの」が消えていく。
それでも、止まるわけにはいかない。
天界に隠された秘密。
冬弥を知るルシエルの過去。
体内で眠る暴食の魔王ベルゼブブ。
そして明かされる、冬弥自身の出生。
なぜ自分は生まれたのか。
なぜ大人になることを許されないのか。
守られ続ける子供でいるのか。
それとも、何かを失ってでも自分の足で前へ進むのか。
これは、天使でも悪魔でもない少年が、
仲間と一本の線を繋ぎ、
自分の人生を自分で選べる「大人」になるまでの物語。
そして機関車は今日も走る。
少年の大切な思い出を、切符代として奪いながら。