あらすじ

父が経営する、八十三室のホテル。 高校二年、十七歳の私は、毎朝五時半から授業前までそこで働いている。 眠い。だるい。 友達はまだ寝ている時間に、パンを補充して、コーヒーカップを下げ、知らない誰かが使ったシーツを剥がす。 最初は、それだけの仕事だと思っていた。 毎週コーヒーを二杯飲む男。 朝から腹が立つくらい幸せそうな大学生カップル。 年に二度だけ泊まりに来る老婦人。 そして、受験を控えているらしい、自分と同じくらいの女の子。 ホテルを通り過ぎていく、名前も知らない人たちの朝。 彼らを見ているうちに、私は少しずつ気づき始める。 私が並べたクロワッサンを、誰かが食べる。 私が淹れ直したコーヒーを、誰かが飲む。 私が伸ばしたシーツで、今夜、知らない誰かが眠る。 その人は、私の名前を知らない。 私も、その人の人生を知らない。 それでも、たぶん世界は、そういう小さな仕事の続きを渡し合いながらできている。 ――まあ、彼氏持ちの女の子は、やっぱりちょっと羨ましいけど。

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カクヨム
カクヨム2026/10/05
  • 現在の作品17歳女、朝のホテルで働く。