あらすじ
私は、彼が独身だと思っていた。
仕事ができて、いつも忙しく、それでも私には優しかった藤崎さん。単身赴任をしている彼には、仕事関係の会食や出張も多く、週末になると家族のもとへ帰っていた。
けれど、私はそれを不自然だと思わなかった。
正確には、思わないようにしていたのかもしれない。
彼について、もっと知ろうと思えば知ることはできた。けれど、好きな人のことを疑うより、信じていたかった。都合の悪いものを見つけてしまうくらいなら、見ないほうがいいと思っていた。
そして、ある日、私は知ることになる。
彼には、私の知らない生活があった。
私の知らない家族がいた。
そして、その事実に気づかなかったのは、私だけだった。
知らなかったのではない。
見ようとしなかったのだ。
これは、不倫だと知らずに恋をした私が、自分自身の「錯認」と向き合うことになる物語。