あらすじ
大学受験に失敗し、なんとなくの大学一年生を送っていた青年は、ある日目を覚ますと一九一八年、外務省本省の自分の執務室にいた。
体は自分のものではない。外務省政務局第二課・八幡光真、二十八歳。青年の遠い先祖であり、歴史書の隅にわずかに名前が残るだけの人物だった。
歴史が好きで、この時代がこの先どうなるかも大体知っている。だが、目の前には片付いていない書類の山と、待たせている上司がいる。
「――いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。仕事しないと」
歴史を変えてやろうという気概も、使命感も、最初は何もない。ただ、覚えている未来と、目の前の仕事をこなす日々が、少しずつ噛み合わなくなっていく。
自分の書いた一枚の意見書が、ほんの小さな判断が、知っているはずの歴史をわずかにずらしていく。その事実に気づいた時、青年はようやく、自分がここで何をすべきかを考え始める。
普通の大学生が、普通ではない時代の、普通ではない立場に立たされる話。
この物語は史実をモチーフとしたフィクションであり、実在の人物、思想、事象とは無関係です。