あらすじ
「被告人、オムレツ。罪状、毒物混入の疑い」
王宮毒見役ミレーユ、28歳。前世は食品メーカーの品質保証部。
この職について12年、一度も毒に当たったことはない。
それは自分が王国最後の防衛線として恐れられているから――と本人は信じている。
実際のところ、厨房の料理人たちは毎朝、彼女の「判決」に賭けている。
無罪か、完全無罪か、それとも執行猶予か。
見習いのティモは彼女の独り言を「名言」として書き留め、城門まで叫んで回る。
おかげで城内での呼び名は、毒見役ではなく「食レポ係」だ。
口の悪さは折り紙つき。
心の中の毒舌はたいてい心の中に収まるけれど、ときどき口からこぼれる。
こぼれるたびに、苦しい言い訳が一品増える。
「このババ……ババロアが食べたいなー」
そんな彼女がある日、下げられてきた皿に気づく。
毒見のあとの30分と、3階まで運ぶ12分。
合わせて42分のあいだに、料理はすっかり冷めていた。
13歳の少年王ユリウスは、24脚の椅子が並ぶ食堂で、ひとり冷めたスープを口に運んでいる。
熱いまま届けたい。前世で食べた、あの料理を食べさせたい。
「ん」しか言わない料理長。賭けの胴元のパン職人。帽子がいつも斜めな菓子職人。
「理論上は」が口癖の宮廷魔術師。そして、規定と懐中時計でできた石頭の侍従長。
メロンパン、カレー、ラーメン、プリン、おにぎり――
毒見役の舌と前世の記憶を頼りに、王宮の厨房は夢の料理の再現に挑む。
毒は出ない。けれど、毒舌は出る。
孤独な王の食卓に「いただきます」が届くまでの、ほろ苦くて温かい宮廷グルメコメディ。
判決。――無罪。本日も、毒なし。
※全25話・完結保証。毎日更新します。
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