あらすじ
神奈川県・城ヶ島。
二十八歳の相沢澪は、潰れかけた実家の釣り船屋「しおかぜ丸」で、今日も笑って受付をしている。
そんな彼女の前に、隔週土曜日になると必ず現れる常連客がいた。
葉山に住む、四十歳の黒瀬航平。
無口で、穏やかで、必要以上に踏み込まない人。
けれど彼だけは、澪が笑顔の奥に隠している無理に気づく。
「受付でも、嫌なことは嫌でいいと思います」
さらにWebの仕事をしている黒瀬は、古びたホームページを見て言った。
「この船の良さ、初めての人には届いていません」
彼の手で少しずつ変わっていく「しおかぜ丸」。
増えていく予約。
そして、近づいていく二人の距離。
やがて、会えない土曜日に寂しさを覚えた澪のもとへ、一本の電話がかかってくる。
「澪さん。会いに行ってもいいですか」
釣りのためではない。
ただ、彼女に会うために。
潰れそうな実家の釣り船屋と、十二歳年上の無口な常連客。
城ヶ島と葉山、二つの海をつなぐ、じれじれ大人恋愛。