あらすじ
八月十五夜、清涼殿の月の宴。
雲間から満ちた月が姿を現したその瞬間、ひとつ、ちいさな音がしました。
やがて漂いはじめたのは、月の宴にはおよそふさわしからぬ、あたたかな風。
「今宵の風の出どころ、歌にて申し開きせよ」
しかも、詠めぬ者は「風の主」とみなす――帝のひと言で、前代未聞の申し開きが始まります。
虫の音だと詠む左大臣。鹿の声だと返す右大臣。真っ赤な顔で帝の唐猫を指さす蔵人少将。そして、都一と噂される鼻で風の道を辿りはじめる中納言。
誰ひとり「その一字」を口にしないまま、言い訳の歌だけが山のように積み上がっていきます。
その一部始終を書き留めるのは、記録係の女房・藤袴。
最高にくだらない事件を、最高に雅な方法で片づける、宮中の一夜の謎解きです。
全8話・約6,700字の短編です。
エブリスタ「超・妄想コンテスト ライトなナゾトキ」参加作品です。
※本作は、史実や古歌をもとにしたフィクションです。