あらすじ
コンビニの夜勤明け、タカシは「参加費無料・謎解き体験モニター」に応募し、見知らぬ部屋で目を覚ます。隣には「ヤンジ」と名乗る若い男がいて、すぐにパニックになり扉へ体当たりを始める。やがてモニターに現れたのは、黒マントと白い仮面の「デスゲームの主催者」。六十分以内に謎を解かなければ恐怖のガスが充満すると告げる。
しかし、最初の問題は「晴れた日の空は何色?」という小学生レベルのなぞなぞだった。ヤンジはレイリー散乱や黒体放射を持ち出して難解に考え込むが、タカシが「青」と答えると扉は開く。第二の部屋も「くつしたからくつを取ると?」程度の問題で、主催者はヤンジが悩むたびに制限時間を延ばし、文字数や鍵の場所まで教えてしまう。床にはLED、椅子にはブランケット、「恐怖のガス」からはバターとバニラの甘い匂いが漂う。
最後の部屋で「いたちたごたいたちたご」から「た」を抜くと「1515」になり、金庫から苺のショートケーキが現れる。主催者は「美味しいうちに食べるのだ」と叫ぶ。タカシが一口食べると、それは去年の誕生日に一人で食べた、商店街の洋菓子店「くりはら」のケーキと同じ味だった。
タカシは真実を暴く。時間延長の電子音はキッチンタイマー、卵のケースや小麦粉は菓子作りの痕跡、金庫はケーキ用の冷蔵庫で、ここは洋菓子店の地下倉庫だと。さらにヤンジこそ主催者の甥で、参加者のふりをするサクラだと見抜く。正体を現したのは、小柄で人のよさそうな店主・栗原だった。
栗原は、寂れた商店街の店に客を呼びたい一心で脱出ゲームを作ったが、参加者が解けずに困る姿を見ると我慢できず、ヒントを出しすぎてしまう性格だった。応募者はタカシ一人だけで、甥に参加者役を頼んだのもそのためだった。三人はケーキを囲み、今後は「ケーキ付きの普通の謎解き」にすることと、ヒントを我慢することを約束して記念写真を撮る。
帰り際、タカシは次回予告のカードを受け取る。そこには答えまで書かれたなぞなぞと、「次はヒントを我慢します」という栗原の誓いがあった。死の危険どころか、ケーキと笑いと誕生日の予約を得ただけの、世界一やさしいデスゲームだった。