あらすじ
●全20回連載予定の、タイムリープや転生などのない、王道の時代小説です。
●縦組みで読んでいただけると幸甚です。
【梗概】
寛政の改革下、狂歌師「四方赤良」として天下に名を馳せる下級御家人の大田直次郎は、老中松平定信から落首の罪を咎められる。
定信は、自身の改革を「力任せの擂粉木」と批判する直次郎を、「孝行奇特者取調之御用(奇特調べ)」という閑職へ出向させる。そして、五年前に起こった、佐野政言による田沼意次の嫡子への刃傷事件を再調査し、自害した政言の無念を直次郎の「曲がった杓子」で掬ってみせよと命ずる。
直次郎は、小島源之助を相棒に調査を開始する。そして、政言が田沼に阿る旗本土山宗次郎にそそのかされ、田沼の出自粉飾に加担して佐野家の由緒書を差し出したことを突き止める。
一方、調査の傍ら、直次郎らは市井で出会った事件を瓦版や狂歌の才を武器に解決していく。
直次郎は、幼き姉妹の仇討ちの助太刀を頼まれる。追われる者の心理を逆手にとって、源之助に「討手の姉妹の所在を明かす瓦版」をばら撒くという策を授け、見事に本懐を遂げさせる。
また、奇特者として評判であった商人が、過去の出来事から番頭に脅されていること、さらに、その番頭が妾の幼子に酷い折檻を加えたことを知る。憤激した直次郎は、旧知のお庭番澤地忠三郎らの協力を得て、歌舞伎「狐忠信」を模した一計を案じて番頭を震え上がらせる。
折しも、直次郎らは、母親の形見の着物を纏わせた張り子を背負い、父親を尋ね歩く若者太一と行き会う。
やがて直次郎らは、旗本土山と連んでいた札差大口屋こそが、太一の父であるという事実を掴む。大口屋の正体は、松前藩が江戸に送り込んだ間者であった。松前藩は、田沼失脚を目論む譜代勢力と結託し、田沼の蝦夷地開発を阻止しようとしていた。
政言の田沼への由緒書献上は、大口屋の口から反田沼の一派に漏れていた。政言は田沼失脚を企む陰謀に巻き込まれ、刃傷へと追い詰められたのであった。さらに、政言を『世直し大明神』と祭り上げた騒動も、反田沼派が周到に準備した世論操作であった。
太一までが大口屋によって瀕死の怪我を負わされ、ついに直次郎は、自らの「筆」で陰謀に立ち向かうことを決意する。