あらすじ

瀬賀和 宇伊は、人気絶頂の女性声優だった。 代表作は、社会現象にもなった乙女ゲーム『聖花のエデン』。宇伊が演じた魔族令嬢アヴリリス・ディア・アイデゴディアは、気高く美しく、冷酷で、主人公の聖女候補を何度も陥れる悪役だった。 アヴリリスは、どのルートでも最後に断罪される。宇伊は収録のたびに、彼女の孤独や誇りを想像しながら声を吹き込んできた。だが、アヴリリスの最期を見届けた夜、宇伊は自室のベッドで眠りにつき、次の瞬間にはゲームの世界にいた。 鏡に映っていたのは、銀白の髪と紅い瞳を持つ少女。自分が演じた、十六歳のアヴリリスだった。 転生時点は、ゲーム本編開始の一年前。ここから何もしなければ、アヴリリスは主人公を敵視し、攻略対象たちの信頼を失い、十八歳の誕生日に行われる断罪イベントで全てを奪われる。 宇伊は、ゲームの知識を使って未来を変えることを決意する。悪役らしい言動をやめ、主人公に近づき、攻略対象たちとの関係も慎重に改める。ところが、アヴリリスの記憶をたどるうちに、彼女が悪事を働いた理由には、魔族の家に生まれた少女の孤独と、家族に利用されてきた事情があったと分かっていく。 さらに、ゲームでは冷淡な人物として描かれていた攻略対象たちは、転生後のアヴリリスに対して、少しずつ異なる表情を見せ始める。王太子は彼女の不自然な変化に興味を持ち、聖騎士は彼女の優しさを疑いながらも守ろうとし、宮廷魔術師はゲームにはなかった魔力の異変を追い始める。 そして、ゲームの主人公である聖女候補もまた、宇伊が知る設定どおりの「無垢なヒロイン」ではなかった。 シナリオから外れた世界で、宇伊は気づく。自分が演じてきたアヴリリスは、最初から悪役だったのではない。誰かに与えられた役を、彼女自身もまた演じていただけなのだ。 台本を知る者だけが見える、物語の綻び。迫りくる断罪の日。魔族の血に隠された王国の秘密。そして、演技ではない本当の恋。 宇伊は、アヴリリスの破滅を避けるだけでなく、彼女が自分の声で未来を選べる結末を目指す。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/10/04
  • 現在の作品大人気声優、魔族令嬢に転生する