あらすじ
二十八歳の誕生日。
仕事を終えて一人暮らしの部屋へ帰った桐谷悠真は、郵便受けに一通の白い封筒を見つける。
差出人は――水瀬美咲。
高校時代、誰よりも好きだった人。
そして十年前、突然悠真に別れを告げ、彼の前からいなくなった女性だった。
戸惑いながら封を開けると、そこには懐かしい文字でこう書かれていた。
「二十八歳の悠真へ。
お誕生日おめでとう。
ちゃんと大人になれましたか?」
どうして今になって手紙を?
そう思った悠真は、便箋の隅に書かれた日付を見て言葉を失う。
2016年12月24日。
それは二人が別れた、わずか三日後。
十年前の日付だった。
そして手紙の最後には、さらに不可解な一文が残されていた。
「いろいろ書きたいけど、今日はこれくらいにします。だって――来年も書くから。」
翌年。
二十九歳になった悠真のもとへ、本当に二通目の手紙が届く。
三十歳。
三十一歳。
誕生日を迎えるたび、十年前の美咲から届き続ける手紙。
そこには高校時代の思い出と、彼女が想像した悠真の未来が綴られていた。
なぜ、美咲は未来の自分へ手紙を書いたのか。
なぜ、あの日突然別れを告げたのか。
そして――
手紙は、いつまで届くのか。
十年前に終わったはずの恋が、一年に一度だけ動き始める。
これは、過去に取り残された一人の男と、彼の未来へ手紙を残した一人の少女の物語。
届くはずのなかった最後の手紙を読むまでの、七年間。