あらすじ
七つで王太子アルフォンスと婚約した公爵令嬢イレーネ。十年、妃教育を積み、完璧な笑顔で隣に立ち続けてきた。
最終学年の春、殿下は言った。
「卒業までの一年だけ、あの子と過ごさせてほしい。今だけだから」
あの子――男爵令嬢リリアーナは、幼い日に湖で殿下の命を救った「菫の少女」なのだという。
「かしこまりました」と頭を下げた彼女は、二度目の「今だけ」を聞いた日、信じるのをやめた。侍女と親友とともに、静かに証拠を積み上げていく。
その強さに気づいたのは、隣国の留学生ディートリヒだけだった。そして一枚のハンカチの刺繍が、誰も知らなかった真実を告げる。