あらすじ
「補給係の分際で、勇者の旅に口を出すな」
三晩かけて作成した遠征物資計画書を床に叩きつけられ、セラフィーナ・ルウは勇者パーティ『黎明の剣』を追放されました。
彼女の前世は、日本の中堅物流会社で在庫管理と配送ルート設計を七年務めた派遣社員。二つの人生を合わせて十四年、荷物を数えて生きてきた女です。スキルは【目録】——物を収納する力はなく、見た物の名称・個数・劣化度・消費期限を一覧化し、七年分保持するだけの、戦闘では何の役にも立たない能力。
ですが、今夜は双子月の夜。二百七日に一度だけ、ギルド契約が神格印として魔力契約化される夜でございます。
——彼は、一度も読んでいません。二百七日前のあの夜、署名欄だけ書いて席を立った、あの契約書を。
灰の回廊は片道十一日。水場の位置、樽の劣化度、消費期限、運搬袋十四個の内訳。すべては計画書に書いてありました。読まなかったのは、どなたでしょう。
どうぞそのまま、二百七日分の旅をお続けくださいませ。荷物の中身、確認なさいます?
怒鳴らない、罵らない。ただ淡々と数字を並べるだけの追放劇。そして数字を読める者を正しく評価する場所が、彼女を待っておりました。
※伝票と兵站と、褒めるのが下手な無口将軍のお話です。