あらすじ
横断歩道で、白い猫が死んでいた。
轢き逃げされたその猫を抱き上げ、「私」は人目を避けて路地裏の行き止まりへと歩いていく。首輪に刻まれた名前は「レナ」。
空の色が移り変わるのを見上げ、冷たくなった彼女のために小さな墓をつくり、雨の中、壊れた傘を手向ける。
誰もいない路地で、私は地面の下の彼女に打ち明ける。自分がなぜ、あの家から逃げてきたのかを。
安全という名の部屋に閉じ込め、「守っている」と笑う兄。着飾られ、何もさせてもらえない日々。
自分の足で歩きたかった一人の少女と、死んだ一匹の猫の、短い逃走の物語。