あらすじ
「今度こそ――間違えるな」
故郷を焼き、母を殺し、妹を奪った男は――なぜかレイだけを殺さなかった。
そして、初めて会ったはずの少年にそう告げた。
辺境の小さな村で、母と妹と暮らしていた少年――レイ・アルヴェイン。
寝坊して母に怒られ、妹とくだらないことで喧嘩する。
そんな何でもない毎日が、これからも続くはずだった。
その日、村に伝わる古い鐘が、ひとりでに鳴り始めるまでは。
一度鳴れば、命の始まり。
二度鳴れば、命の終わり。
三度鳴れば――世界の終わり。
しかし、三度目の鐘が鳴る直前。
鐘楼は破壊され、黒衣の集団が村を襲撃する。
母は命を落とし、十三歳の妹リナは黒衣の男に連れ去られた。
妹を取り戻そうと男へ挑んだレイは、圧倒的な力の差を前に敗北する。
だが男は剣を止めた。
レイの持っていた、見知らぬ銀髪の少女の落とし物を見た瞬間に。
「……もう、ズレているのか」
そして男は、レイを殺さず姿を消した。
翌朝。
焼け落ちた故郷で、レイは一枚の紙を見つける。
そこに残されていたのは、たった一文。
『エルナを探すな。』
知らない名前だった。
会ったこともない。
それなのに。
「エルナ」
その名を口にした瞬間――レイの目から、一滴の涙がこぼれた。
なぜ、男はレイを殺さなかったのか。
なぜ、妹だけを連れ去ったのか。
三度目の鐘は、なぜ破壊されたのか。
そして――エルナとは誰なのか。
妹を取り戻すため、レイは故郷を旅立つ。
その旅の果てで彼は知ることになる。
この世界には、決して触れてはならない《記録》が存在することを。
死んだはずの人間。
存在しないはずの街。
二つの過去を持つ人々。
やがて世界では、あり得ないはずの「歴史」が重なり始める。
――世界が間違っているのか。
それとも。
俺が、間違えたのか。
これは、世界に刻まれた運命に抗う者たちの物語。
そして――
まだ誰も知らない《原典喰らい》の終末譚。