あらすじ
親友(マブ)』
両親を五歳の時に事故で亡くした。
水城尊、二十六歳。町中華「龍水軒」で、源さんと五歳上の小雪に帰化してまで育ててもらった。
人が好きで、誰とでも分かり合えると信じている尊の夢は、世界中の人と「親友(マブ)」になること。
そんな尊が十八歳の頃、地上げ屋から町を守るため任俠の世界に足を踏み入れた。
そこで出会ったのが、任俠水組総帥・水月嶺。 尊の人を思いやる心を見抜いた嶺は、彼に「静寂の尊」という二つ名と、水の篆書を刻んだ金のバッヂを託す。
それから八年。
尊は相変わらず龍水軒で人々に囲まれながら、平凡な毎日を送っていた。
しかしある日、同級生の志緒里の情報から、尊は国家を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれる。
国の重要施設を利用した計画。 暗躍する武装組織。 権力と財力を手に、日本そのものを動かそうとする者たち。
本来なら、ただの町中華の青年が関わるような事件ではない。
だが尊の前に現れたのは、自分の欲望のためなら人を踏み台にする者たちだった。
「心を入れ替えりゃ、お前だってオレの親友(マブ)になれるのにな」
尊は敵を倒すことだけを望まない。
どれほど強大な相手であっても、人を傷つけることをやめ、心を通わせる道が残っているなら、最後までそれを信じようとする。
一方、尊の周囲には、彼を支える仲間たちがいる。
陸上自衛隊、公安警察、皇宮警察、そして任俠の男たち。
それぞれの立場も生き方も違う者たちが、いつしか尊のために動き始める。
そして尊自身もまた、仲間たちに背中を預けながら、巨大な陰謀の中心へと踏み込んでいく。
世界中の人と親友になりたい。
そんな途方もなく大きな夢を、本気で信じている一人の青年。
これは、国を救った英雄の物語ではない。
たまたま大きな事件に巻き込まれ、たまたま一つの金のバッヂを託されただけの、町中華で育った人好きな男の物語。
そして今日も――。
「龍水軒」には、人々の笑い声が響いている。
人と人との間にあるものは、敵意なのか。
それとも、まだ「親友(マブ)」になれる可能性なのか。
水城尊の答えは、いつだって同じだった。