あらすじ
世界の地下を巡る力の流れ――《神脈》。
そこから生じる《レイア》とともに、人々が生きる世界。
各地を渡り歩き、依頼を請け負って暮らす傭兵レイン・クロウは、交易都市リュネールで一つの仕事を終えたばかりだった。
次の仕事を探し、また別の土地へ向かう。
いつも通りの旅になるはずだった。
しかし、市場で偶然助けた少年トアが拾った、奇妙な紋様の刻まれた小さな欠片。それに触れた瞬間、レインの脳裏に自分のものとは思えない光景が浮かぶ。
灰に覆われた街。
燃え落ちる家々。
そして、こちらへ伸ばされる誰かの手――。
七年前より以前の記憶を失っているレインにとって、それが過去の記憶なのか、ただの幻なのかさえ分からない。
やがて欠片は不可解な光を放ち始め、それを目にした謎めいた旅人リシェル、神脈の異常を調査する《ユグレア》、そしてリュネールの地下で起こり始める異変が、互いに無関係だったはずの出来事を少しずつ結びつけていく。
偶然拾われただけに見えた欠片は、いったい何なのか。
なぜレインは、それに触れたとき存在しないはずの記憶を見るのか。
そして――灰の向こうから彼を呼ぶものは何なのか。
これは、世界を救う使命を与えられた英雄の物語ではない。
仕事のために各地を旅していただけの一人の傭兵が、出会うはずのなかった人々と出会い、自らの失われた過去と、長い歴史の中に埋もれてきた世界の秘密へ少しずつ近づいていく物語。
国家、種族、宗教、それぞれの正義と利害が絡み合うオルディアを舞台に、やがて小さな欠片を巡る出来事は、一つの街だけでは収まらない旅へとレインを導いていく。
これは、ただの依頼のはずだった。
だが、その欠片がすべてを変えていく。