あらすじ
ある人が、孤独な日々を送っていた。名前を呼ばれることはめったになく、送ったメッセージはいつも既読のまま放っておかれる。ある夜、部屋の壁掛け時計の音がだんだん小さく、遠くなり、ふっと消えた。気がつくと、重力さえ薄れた果てしない闇の中を漂っていた。そこで出会ったのは、火花のような笑顔を浮かべる謎めいた存在「君」だった。「君」が語ったのは、子どもの頃のくだらない思い出。かくれんぼで隠れるのがうますぎて、友だちに忘れられてしまったこと。そして、見つけ出してくれたおばあちゃんが「きっと、きっと見つけてあげる」と約束してくれたこと。その話を聞きながら、自分を探してくれた人などひとりもいなかったと気づいたその人は、生まれて初めて、自分から手を差し出す。ふたりは永遠の闇の中で踊り、他愛もない話を交わす。そのうちに、ずっと隠してきた心の傷が、少しずつ癒えていく。