あらすじ
京都生まれ、幼少期を南スイスで過ごした文学好きの冴えないナードの高校生、五十嵐太。
両親の仕事の都合で、彼は何度目とも知れない引っ越しを経て、ベルギーのブリュッセルへとやって来た。新たな学校はIB課程を備えたインターナショナルスクール。太った体に冴えないルックス、勉強もぱっとしない太は、華やかな学園生活とは無縁のまま、影のように日々を過ごしていた。
そんな彼にも、文学サークルでの偶然をきっかけに、フランス人の少女マリーという恋人ができる。誰もが目を奪われる美貌、規格外の財力、洗練された立ち居振る舞い。才色兼備で、非の打ちどころのない人格者。何もかもが太とは対照的な、まさに完璧な少女だった。
しかも、そんな完璧な彼女は彼をひたすらに甘やかし、一途に愛してくれる。太の望むものを何でも与えようとする。当然のことながら、そんなマリーに意志の弱い太はますます依存していく。彼女を恋人にできたのだから、浮かれるのも無理はない。人生のすべてを手に入れた。そう思えるほどの幸福だった。
しかし、マリーとの交際は、太を彼女の輝かしい世界へと引きずり込んでいく。
プロム、パーティー、ビーチクラブ、華やかなバケーション。慣れないスラングに、暗黙の階級意識。そこは太がこれまで生きてきた世界とはまるで違う、トップスクールカーストの学生社交界だった。
マリーに恥をかかせまいと奮闘すればするほど太の努力は空回りする。さらに、彼女を狙っていたフラットボーイズ(一軍男子たち)から嫉妬と反感を買った太は、マリーの目の届かないところで陰惨ないじめの標的にもなってしまう。彼女の輝かしい交友関係を壊したくない、そう考えた太は苦しみを打ち明けることもできない。
やがて精神的に追い詰められた彼は、マリーがなぜ自分をこれほどまでに愛してくれるのか、そして、いつか自分を見限ってしまうのではないかという恐怖さえ抱くようになる。幸せだったはずの生活は一変苦痛の対象となる。
そんな折、太は両親の新しい上司の娘である、ロシア系アメリカ人の少女アリサと出会う。しかも同じ学校に通っているのだという。マリーとは対照的に物静かな彼女に惹かれた太は、あしらわれながらも、身勝手にその関係を求め始めるが……。