あらすじ
冬のあいだ閉ざされていた峠道が開く「春帰り祭」。
色火師のイネスと、打上げ師のベアトリスは、祭りの最後を飾る魔法花火を任されていた。
町の紋章――「七羽の銀燕」を夜空へ描く大仕掛けだ。
図面は完璧。
打上げも予定どおり。
ところが町から届いた報告は、
「三羽くらいにしか見えなかった」
「最後の二羽が重なった」
「白い点にしか見えなかった」
というものだった。
安全のため高い土塁の裏で作業する二人には、町の人々が見ている完成形そのものを見ることができない。
イネスは美しい一羽を作ることにこだわり、
ベアトリスは七発を安全に上げることにこだわる。
そして二度の試し打ちを経て、二人はようやく気づく。
必要なのは、図面どおりの七羽でも、正確に上がった七発でもない。
町から見上げた時に――ちゃんと「七羽」に見えることだった。
これは、異なる専門を持つ二人の職人が、見る人の目まで借りながら、一つの夜空を完成させるまでの物語。