あらすじ

冬のあいだ閉ざされていた峠道が開く「春帰り祭」。 色火師のイネスと、打上げ師のベアトリスは、祭りの最後を飾る魔法花火を任されていた。 町の紋章――「七羽の銀燕」を夜空へ描く大仕掛けだ。 図面は完璧。 打上げも予定どおり。 ところが町から届いた報告は、 「三羽くらいにしか見えなかった」 「最後の二羽が重なった」 「白い点にしか見えなかった」 というものだった。 安全のため高い土塁の裏で作業する二人には、町の人々が見ている完成形そのものを見ることができない。 イネスは美しい一羽を作ることにこだわり、 ベアトリスは七発を安全に上げることにこだわる。 そして二度の試し打ちを経て、二人はようやく気づく。 必要なのは、図面どおりの七羽でも、正確に上がった七発でもない。 町から見上げた時に――ちゃんと「七羽」に見えることだった。 これは、異なる専門を持つ二人の職人が、見る人の目まで借りながら、一つの夜空を完成させるまでの物語。

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小説を読もう2026/10/03
  • 現在の作品花火は、打ち上げ台からは見えない