あらすじ
主人公は凡庸な男でありながら、天才ピアニストの妻を娶った。妻の輝きが増すほど、彼は嫉妬と自己否定の沼に沈み、夜ごと眠れなくなっていく。妻が病に倒れると、彼は卑劣な安堵と深い罪悪感を抱えながら、彼女の最期に寄り添う。妻の死後、残された日記には、彼女が自らの不治の病を知り、夫の苦悩のすべてを見抜いていたこと、そして「生きて」と書き残していたことが綴られていた。だが凡人にとって、生きることそのものが罪である。最後、彼は春の陽射しのなかで自ら命を絶つ。死の彼岸で、二人の魂はようやく罪と罰から解き放たれ、対等に見つめ合う。