あらすじ
小学五年生の幼き日。アキラは晩夏の夕暮れ、開け放たれた窓から差し込む斜陽を浴びながら行水に興じていた。夏の終わりを告げるヒグラシの鳴き声が心地よかった。……その刹那、薄朱に染まった湯気を切り裂く黒い影が、禍々しい羽音とともに飛来したのである。アキラに振り向く間も、躱す余裕も一切与えなかった。奴はアキラの無防備な背に張り付いた。
以来、アキラは自身の半径三メートルという聖域を侵す不浄なる奴らの気配を、その足音を、本能的に察知する能力を得た。
九月季秋、それは台風シーズン。奴らとの死闘の季節である。
今年もついにその日がきた。