あらすじ

「風読みなど下女の技だろう。婚約は破棄する」 大聖堂の前庭で、第二王子アルヴィン殿下は聖女ミレーヌ様の肩を抱いたまま、そう告げました。粉挽き伯爵家の娘にして〈王都風読み官〉セレスティアは、小麦粉の袋を抱え直し、ただ一礼して――署名済みの婚約解消同意書と辞任届を差し出します。 泣き縋る予定だった台本は、そこで崩れました。 そして彼女は最後に、静かに申し上げます。「三日後の建国祭・空竜奉納飛行ですが――風は、やみます」と。 聖女の神託は「大空晴れ、風良し」。王子はその進言を一蹴しました。セレスティアは怒鳴りません。ただ帳面を開き、日時と場所と立会人の数を、淡々と書き記すのです。 「どうぞ、そのまま挙式をお続けくださいませ。――風は、嘘をつきませんので」 前世は過労死した民間気象予報士。転生して得たスキルは《風読み Lv.1》、鑑定結果は「生活スキル」。戦闘職に鼻で笑われる地味な技能。けれど彼女には、毎朝四時から十年、一日も欠かさず記し続けた三千六百五十日分の帳面がありました。 頬の湿り、羊毛の揺れ、雲の底の高さ、井戸水の匂い。誰にも読まれなかったその積み重ねが、辺境ミラウィンド領で、やがて静かに世界を動かしはじめます。 叫ばず、罵らず、ただ記録する。 観測と誠実さで綴る、やさしい追放ざまぁ譚。 意味は、後から生えるのです。積み重ねた日数の、ちょうど上に。

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小説を読もう2026/10/03
  • 現在の作品『風読みなど下女の技だ』と聖女様に婚約者を奪われましたが、王都の風は三日後に止まりますので、どうぞそのまま挙式をお続けくださいませ ~元気象予報士の転生令嬢、三千六百五十日分の帳面で静かに断罪いたしま