あらすじ
「先生の実力は、こんなものじゃありません!」
かつて王都錬金術学院で研究に励んでいた錬金術師、キリオン・ハルフェン。
自らの理論に限界を感じて学院を去った彼は、長い旅の末に故郷へ戻り、今では田舎町の便利屋として穏やかな日々を送っていた。
年齢は四十歳。近頃は眼鏡がなければ細かい文字も見えず、自分の便利屋としての生活に、どこかで区切りをつけたい年ごろだと感じている。
そんな彼のもとへ、ある日、一人の女性が訪ねてきた。
彼女の名はセレスティア・レインベル。
かつてキリオンから錬金術を学び、今では史上最年少で宮廷主席錬金術師に上り詰めた、王国を代表する天才錬金術師である。
「先生。王都学院で、講師をしていただけませんか?」
もう歳だからと断るキリオンだったが、セレスはまるで聞く耳を持たない。
結局、彼女の熱意に押される形で王都へ向かうことになったキリオンは、十年ぶりの学院で、すっかり様変わりした錬金術の世界を目の当たりにする。
しかし、彼が何気なく教える錬金術の基礎や、失敗を恐れず原因を追究する姿勢は、いつしか学生たちの常識を揺さぶり始めていた。
彼女に加えて、かつて自分が戦い方を教えた「武装錬金の祖」。
キリオンが旅先で作った道具に感銘を受けた「王都の天才魔道具職人」。
錬金術の頂点に立つ教え子たちは、揃いも揃って自分たちの師匠を過大評価している……と、キリオンは思っていた。
けれど、彼女たちにとっては違う。
今の自分たちがあるのは、間違いなく先生のおかげなのだ。
これは、すっかり隠居気分の中年錬金術師が、立派になった教え子たちに振り回されながら、再び錬金術の世界でその名を知らしめていく物語。