あらすじ
戸塚勲、三十四歳。インディー団体で十五年、負け役ひと筋だった元プロレスラーである。
バックドロップを受けた瞬間、彼は見知らぬ闘技場の砂の上に落ちていた。そこは観客の喝采がそのまま力になる国。
魔力ゼロの戸塚は、客席から見れば「やられるためだけに雇われた男」でしかない。ところが彼が全力で技を受けるたび、技を放った側の喝采だけが爆発的に膨らんでいく。
観客を煽って視線を誘導し、相手の技を一番映える形で受け、倒れてなお客席を沸かせる。
唯一の客である剣聖シグレは、技量は国一番なのに愛想がゼロで、喝采が溜まらず塩試合ばかり。
二人は実況のガロ、音響技師ウルカ、金に厳しい興行主ペルラを巻き込み、前座から国民的興行を目指す。やがて王国の空に、全員の視線を吸って育つ災厄が現れる。
受けて、沸かせて、最後は主役を譲れるか。
笑って熱くなれる、受け身の異世界バトル。