あらすじ
「あいつら全員、呪ってやる」
国じゅうが泣いた「微笑みの聖女」の遺体を洗っていたら、遺体が口を開いて、そう言った。
灰都ロムナの最下層で死体を洗う少年、ヴィム。
ケチで、口が悪くて、死体のポケットから小銭を抜く。ただし、どんな死体も、必ず顔を拭いて名前を呼ぶ。
洗い台の縁に座った聖女の霊が見せたのは、九百十二件の「怨み帳」。
香水がくさい。プリンを食べられた。門番の鼻毛が出ている。
――しょうもない。けれど、この世界の魔法は、死者の言えなかった気持ちで撃つ。
綺麗な感情は燃えない。燃えるのは、みっともない本音だけ。
くだらない怨みを掘るたびに、都の大きな罪が出てくる。
腐らせた寄付の薬。三日放置された死体。聖女の顔を刷った「聖油」の正体。
そして、聖女という存在そのものに隠された、三百年の嘘。
意味の分からない詠唱と、黒い雷。
金が欲しい屍洗いと、怨みを晴らしたい聖女の、汚くて、人間臭くて、少しだけあったかいダークファンタジー。
最後の一件、九百十二件目の相手は――。
全100話+あとがき・完結済み。本文およそ23万字。