あらすじ
ライバーに恋する全てのリスナー達へ──
薬師エルナには、夜だけ別の顔がある。
精霊の力を借りた「語り灯」を通して、眠れない人たちの相談に答える夜語り――その名も《宵待》。
薬草の相談から夫婦喧嘩、眠れない夜の過ごし方まで。
顔の見えないリスナーたちの声に、エルナは毎晩、言葉を返している。
そんな彼女には、半年間欠かさず便りを寄越す常連がいた。
夜の名は《見習い》。
いつもは自分のことを語らず、部下の怪我や騎士たちの体調ばかりを相談してくる、少し不器用なリスナーだ。
ところがある夜、彼から初めて「自分自身の相談」が届く。
――仕事で関わった女性のことが気になっている。
――その人に、どう近づけばいいのか分からない。
エルナは薬師として、そして《宵待》として、彼の恋を応援することになる。
花を贈ってみては?
まずは相手の好きなものを知ってみては?
困っているときには、さりげなく手を貸してあげて。
そう助言した翌朝。
エルナの店に現れたのは、部下の怪我をきっかけに知り合った、あの「石像団長」だった。
無口。
無表情。
何を考えているのか、まるで分からない。
しかも彼は、なぜか大量の薬草を木箱ごと持ってきて――
「……花だ」
「カモミールですね。業務用の量の」
どうやら恋愛相談の相手は、とんでもなく不器用らしい。
やがてエルナの周囲では、騎士団による謎の聞き込みが始まり、店の前には石像団長が毎日のように立つようになる。
一方、《宵待》のもとには、今日も《見習い》から便りが届く。
自分が恋されているとも知らずに。
そしてエルナ自身も、少しずつ気づき始める。
昼間、店を訪れるあの人と。
夜、声だけで心を通わせるあの人。
――もし、この二人が同じ人だったら?
これは、顔の見えない「推し」に恋をした騎士と、
その恋愛相談に乗っているうちに、自分自身が恋されていることに気づかない薬師の物語。
今夜も《宵待》は、あなたの眠れない夜に灯りをともす。