あらすじ
山の中で、少年は不思議な黒い箱を見つけた。
それは、誰でも触れることができる普通の箱のように見えた。しかし、丸いものを押すと黒いところが明るくなり、少年にだけ、その中に知らない人々や巨大な建物、空を飛ぶもの、夜でも明るい街、たくさんの食べ物など、不思議な世界が見えるのだった。
少年は最初、その世界をミナやガルドに見せようとする。
しかし、二人には何も見えない。
画面には何もない。ただの黒い箱にしか見えないという。
そこで少年は、箱を他人に見せることを諦め、自分が見たものを村人たちに話すことにする。
最初は、見たものをそのまま話してしまうため、話はうまく伝わらなかった。
それだけでは、聞く側にとっては何が面白いのか分からない。
そこで少年は、一人の人間に目をつけ、その人物が何をして、誰と会い、どこへ行ったのかを順番に話すようになる。
やがて少年の話は、ただの「不思議な話」から、一人の人間を主人公にした物語へと変わっていく。
村人たちは少しずつその話を楽しみにするようになり、
「今日はどんな話だ?」
「昨日の続きは?」
「その人はどうなった?」
と、少年のもとへ集まるようになる。
しかし、少年自身はまだ知らない。
自分が語っている世界には、自分たちの村には存在しないものがいくつもあることを。
子供たちが集まって何かを学ぶ場所。
病気や怪我をした人を助ける白い服の人々。
夜でも明るい街。
好きなだけあるように見える食べ物。
遠くまで走る不思議な乗り物。
空を飛ぶもの。
少年にとっては、ただ「不思議な場所」でしかない。
だが、それを聞いた村人たちにとっては違った。
「なぜ、あの場所には子供が集まる場所があるのだろう」
「なぜ、あんなに食べ物があるのだろう」
「なぜ、病気の人を助ける場所があるのだろう」
少年が何気なく語った物語は、少しずつ村人たちの中に疑問を生み始める。
少年は何かを教えようとしているわけではない。
ただ、自分が見たものを話しているだけだった。
しかし、人々は少年の話を聞くうちに、自分たちの暮らしている世界について考え始める。
一人の少年が見た「別の世界」の物語が、人々の中に新しい疑問を生み、その疑問がやがて社会そのものを揺り動かしていく物語である。