あらすじ
「空気の分子量はいくらかね」
入社面接で問われたその一問に即答したところから、十年が始まった。
配属されたのは、鹿島建設も三菱重工も下請にする部署。
二十代で北京へ送られ、エチレン工場の試運転をやった。
次はアルジェリアの砂漠で技術指導。
さすがに疲れて辞表を出したら、「給料に不満か」と聞かれたので「いえ、もらいすぎです」と答えた。
そしてフランスの片田舎に留学したのに、かつての上司から電話がかかってきて、また同じ砂漠へ送り返される。
その次は通訳として、赤道直下の西アフリカへ。
辞めるたびに、なぜかもっと遠くへ連れていかれる。
ご飯一杯にコクゾウムシが三十匹浮く宿舎で、
看板のない社会主義国を五千キロ走り、
教えた諺を午後の会議で敵に使い返される。
これは、一人のプラント技術者が世界の現場で見たものと、
そこで出会った人たちの十年の記録である。
※本作に登場する日本人の名前は、ご本人の特定を避けるため一部を仮名にしています。学校名も同様に伏せてあります。