あらすじ
聖女アデルは、三年以上片想いした神官ルシアンが婚約したと聞き、告白することもできないまま失恋した。
大聖堂の裏庭でひっそり泣いていたところを、よりによって本人に見つかってしまう。
「では、一緒に気晴らしでも行きますか」
最後の思い出を作るために神様がくれたご慈悲なのだと自分に言い聞かせ、アデルは彼と街へ出かけることに。
けれど、いつも隙なく見えるルシアンの私服は皺だらけで、袖の位置は左右で違う。甘い菓子を無造作に頬張り、隣で笑う。
知らなかった彼の顔をひとつずつ知るたび、終わらせるはずの恋はますます苦しくなっていく。
そのうえルシアンは、なぜか彼女の失恋相手についてやたらと聞きたがる。
「何故、そいつのことが好きだったんですか?」
――好きなのは、目の前のあなたです。
なんて、言えるはずもない。
長い片思いに別れを告げるはずだった聖女と、穏やかな顔で彼女を連れ回す神官。
勘違いから始まる、じれ甘な一日の恋物語。