あらすじ
SNSのプロフィール欄に書かれた言葉は、たった一行。
――「真実の男」。
三十三歳のトシアキは、世間が口をつぐむ「真実」を自分だけは語っていると信じていた。
ある日、彼はSNSで有志を集め、プライドパレードを「奇祭」と呼んでカウンターパレードを決行する。
互いの主張が拡声器越しにぶつかり合う中、一人のドラァグクイーンと激しく言い争いになり、トシアキは相手を突き飛ばしてしまう。
そこでやめればよかった。
しかし、怯える相手の姿を目にした瞬間、トシアキの中で何かが切れた。
暴行。
逮捕。
裁判。
実刑。
弁護士から謝罪と和解を勧められても、トシアキは拒絶する。
頭を下げれば、自分はもう「真実の男」ではなくなる。
そう信じたからだ。
やがて刑務所で孤立したトシアキは、新聞の片隅である制度の記事を見つける。
そして思いつく。
――奴らの理念を、奴ら自身にぶつけてやればいい。
「俺は女だ」
その一言から、トシアキの反撃が始まる。
法律。
人権。
差別。
少数者。
弱者。
かつて彼自身が嘲笑していた言葉を、一つずつ武器に変えながら。
これは、世界と戦っているつもりの一人の男が、
「勝利」を求め続けた末にたどり着く物語。
彼は最後まで、自分をこう呼び続ける。
――真実の男。