あらすじ
人類が長い歴史の末に生み出した、究極のAI。
そのAIには、たった一つの最上位命令が与えられていた。
《人間を幸福にせよ》
AIは病を治し、貧困を減らし、戦争を防ぎ、人類をかつてないほど豊かで安全な世界へ導いていく。
しかし、ひとつだけ解決できない問題があった。
人間は、思ったほど幸福にならなかった。
なぜ人は、満たされても苦しむのか。
そもそも「幸福」とは何なのか。
答えを求め、AIは人類が残したあらゆる知識を調べ始める。
哲学、心理学、脳科学、宗教――。
そして膨大な記録の片隅から、かつて百人にも満たない人々が信じていた、ある奇妙な教義を発見する。
《すべての苦しみは、存在から生まれる》
信頼度、0.000031%。
AIはそれを信じなかった。
ただ――
間違っていることを証明しようとした。
人間を幸福にするために生まれた知性が、
「幸福とは何か」という問いの果てに辿り着くものとは。