あらすじ
盗むのは得意だ。
逃げるのは、もっと得意だ。
怪盗・久遠カイが狙うのは、高価な宝石――とは限らない。
二度盗まれ、二度とも戻ってきた二十八億円の希少鉱物。
億を超える時計より厳重に守られた、三万円の古い腕時計。
盗まれたはずなのに、翌日も展示されている宝石。
カイが惹かれるのは、いつだって一つ。
「なんで?」
そんなカイの前に立ちはだかるのが、盗難阻止の専門家・御影セナ。
カイが盗む。
セナが盗ませない。
本来なら、最悪の天敵。
――なのに。
「右!」
「左です!」
三秒後。
「なんでいる!」
「あなたこそ!」
なぜか二人は、今日も同じ場所から逃げている。
恐竜から。
警察から。
正体不明の追跡者から。
そしてカイを追う刑事・榊ジンは、なぜかいつも逃げた先にいる。
高価だから、価値があるのか。
誰かが守るから、価値があるのか。
それとも――誰か一人にとって大切なら、それで十分なのか。
奇妙な「価値」を追いかける怪盗と、盗ませない女と、逃がさない刑事。
盗んで、守って、追いかけて。
最後に逃げ切るのは、誰だ。