あらすじ
涙を流すたび、その雫が高価な魔石へと変わる令嬢――リシェル。
けれど、その力は彼女に幸福をもたらさなかった。
家族にとって、リシェルは愛すべき「娘」ではない。
泣かせれば、いくらでも富を生み出す――ただの道具だった。
暗い地下牢に閉じ込められ、今日も涙を求められる日々。
そんなリシェルの前に、ある日、一人の男が現れる。
「……やっと見つけた」
帝国中から恐れられる若き皇帝、アルフレッド。
反逆者には容赦なく、敵には慈悲すら与えない。
人々から《血も涙もない皇帝》と呼ばれる男だった。
リシェルは思う。
今度は、この人が自分の涙を欲しがっているのだ、と。
ところが――。
「泣く必要はない」
与えられたのは、柔らかなベッド。
温かな食事。
美しいドレス。
そして、何よりも理解できなかったのは――何ひとつ見返りを求められないこと。
優しくされればされるほど、リシェルは怖くなる。
だって彼女は、知らない。
何かをもらったら、何も返さなくていいことを。
泣きたくなければ、泣かなくていいことを。
「嫌」と言っても、誰にも傷つけられないことを。
そして――誰かに大切にされることを。
「血も涙もない皇帝」は、なぜ彼女だけをこれほど大切にするのか。
なぜ、何も求めようとしないのか。
これは、涙に値段をつけられて生きてきた令嬢が、
不器用すぎる皇帝に大切にされながら、
少しずつ「自分のために生きること」を知っていく物語。
※この作品は「アルファポリス」でも同時投稿しています。