あらすじ
黄昏街の迷子案内所で働く少年・ルカは、落とし物に染みつく持ち主の感情を感じ取る「鑑定士」だ。ある日、警備隊から預かったからくり仕掛けの小箱に、強い焦りと涙の気配を読み取る。箱には鏡文字の手紙が添えられ、「三つめの鐘の前に、いつもの展望台で」と記されていた。
相棒の伝書フクロウ・ポッケと共に鏡の路地へ向かうと、鏡磨きのばあさんから、手紙の主が人間の少女フィオと、ツノのある少女エルの二人組だと知らされる。二人は毎朝、時計塔のベンチで待ち合わせ、喧嘩すると鏡文字の手紙で仲直りしてきたという。だが今日、エルの一家は三つめの鐘で街を去る最終馬車に乗る予定だった。
ルカは、フィオが箱をベンチに置き、顔を合わせられないまま展望台へ向かったのだと察する。一方、エルはフィオが来なかったと思い込み、別れを覚悟していた。箱のダイヤルに刻まれた音符や、ばあさんの話から、開け方が「二人の秘密の歌」だと見当をつけたルカは、箱をフィオではなくエルへ届けることを決める。
発着場でエルに箱と手紙を渡すと、エルは迷わずダイヤルを回して蓋を開け、中から星のペンダントと、フィオの本心が綴られた手紙を見つける。「勝手に行けば」は嘘で、本当は「行ってほしくない」――涙ながらに笑うエルは、裏返しの字で返事の手紙を書き、ルカに託す。ポッケがその手紙を展望台のフィオへ運び、二人は馬車の上と柵の下で手を振り合う。
案内所の帳簿に、ルカは「持ち主:フィオ」「返却先:エル」と記す。持ち主と返却先が異なる初めての落とし物。それは、届くべき場所へ届いた、二人の友情の証だった。