あらすじ
◆
何も言わなければ、失わずに済むと思っていた。
そばにいられるなら、それでいいと。
けれど、言えなかった言葉は消えてはくれない。
それでいいと何度思っても、本当は――。
いつか終わると、分かっていたはずなのに。
俺はずっと、その日が来なければいいと思っていた。
◆
15年前、とある出来事で日常を失った美作紅葉。
そんな紅葉に寄り添い続ける、伊久間奏斗。
同じ職場。隣り合う部屋。
眠れない夜の合図は、『起きてる?』
2人は恋人にならないまま、約10年間、名前のつかない関係を続けていた。
そんなある日、2人が働くビルに、久我亮二の営む喫茶店「クロッカス」が開店する。
クロッカスで過ごす時間が増えるにつれ、だんだんと亮二に惹かれる紅葉。
けれど亮二には、明かせない正体と、紅葉へ近づいた本当の目的があった。
そして奏斗にも、紅葉には言えない秘密があった。
――嘘をついていたのは、2人だけではなかった。
紅葉もまた、自分自身に嘘をつき続けていた。
3人の嘘が崩れたとき、止まっていた15年前の出来事と、それぞれの想いが動き始める。