あらすじ
街道の途中で、旅人や商隊に温かい食事を売る移動食堂《銀匙号》。
料理を担当するエステルと、仕入れや帳簿を担当するヴァンサンは、四年間この店を二人で切り盛りしてきた。
ある日、大手の《白梟商会》から破格の買収話が持ち込まれる。
《銀匙号》を五台へ増やし、エステルは料理責任者、ヴァンサンは運行と補給の責任者へ。
事故や修繕の負担も商会が引き受け、今よりずっと安定した暮らしが手に入る。
さらに、エステルには王都で自分の店を持つ道が、ヴァンサンには大手商会で出世する道まで用意されていた。
どちらも、一人でやっていける。
だからこそ、エステルは考える。
「じゃあ、できないから一緒にいるわけじゃないでしょ」
これは、一人では何もできない二人の話ではない。
一人でもやれる二人が、それでももう一度「二人で店をやる」ことを選び直す、街道沿いの小さなお仕事ファンタジー。