あらすじ
本日の主役→残雪 唯
『華麗なる(?)帰宅理論』などなど
https://kakuyomu.jp/works/16817330669713117110
……
日頃の事も兼ねて、全身全霊で『怪盗』を騙すにあたり改造に改造を重ねた結果、銭湯として運用不可能になった1階を眺め……
「さて…どうしたものか。」
『怪盗』から(半ば強引に)任され、今はもう誰もいなくなったこの場所をどう活用してやろうかと……俺はゆっくりと思考を巡らせる。
やはり資金調達をどうするかだな。金がなければ、人も物資も搬入する事は不可能だし、お話にすらならない。
この銭湯ごと売却するのも手だろうが…と考えていると、階段を降りて来る音がした。
まさか俺以外に、ここに残ってる奴がいたとは嬉しい誤算だ。
相手が誰だろうといい感じに騙して、俺の忠実な駒としてコキ使ってやろう。
「あの。あなたが———さんですか?」
「……ほう。」
その白髪といい、見覚えしかない……佐藤 楓。
作者公認の最弱にして、最強の女。
通称———『本物の化物』…だったか?
『怪盗』を騙した時以外にもしれっと利用した事があったからな。しかし驚いた。俺の本名を言い当てられるとはな。
【零落園】の連中ですら『怪盗』以外は誰も知らない極秘情報だというのに…半分は嘘だが。
「誰だソイツは。俺はイリヤという者だ。」
「そうでしたか…嘘をついたのですね。全く…本当に使えない。」
おっと、悔しくてつい嘘を吐いてしまったが…まあいい。この女が誰と話をしているのか気にはなるが……後回しだな。
「で…何か用か?用がないなら、さっさと出て行け。警察に通報してやってもいいんだぞ?」
警察といった組織が果たして『擬似世界』に存在しているのかは、謎だが…言うだけタダだ。脅しとしても通用するだろう。
「え、えっと…」
事実、少し焦ってるみたいだ。ふ…案外、チョロいぞこの女。赤子の手を捻るように、容易く騙せ「その…イリヤさん。借金を返済するのを…手伝ってくれませんか?」
「……」
感情を表に出してしまうのは『詐欺師』としては二流…無論、俺はそんなミスはしない。
……それはそうと
「何言ってるんだこの女は?」とは思うが。
20代そこらの人間が、言い訳もせずに素直に誰かに助けを求められるは、ある種の美徳かもしれないが……限度があるだろ。
「額は?」
「ひっ、180億……です。」
何処ぞの借金塗れな探偵よりかはマシな額だが…高額なのは間違いない。
真剣に頭を下げる女に俺は告げる。
「分かった。俺がその借金をどうにかしよう。ただし…条件がある。」
「えあっ……!?な、何でしょうか?」
『本物の化物』だのと言われながらも、庶民的な価値観を持ち合わせているのか?
いや…180億を気軽に俺が「返済してやる」と言うものだから、そういうおかしな反応になってしまってもおかしくはないな。
どうやら、何か裏があると疑える頭脳はあるらしい。
「借金返済の目処が立つまで、俺の命令に従え…以上だ。分かったか?」
「ええと…具体的に、私は何をすればいいですか?」
即答か…よほど、切羽詰まっていると見える。扱い易くて俺としては大いに結構なことだが。
頭を上げた女に俺は考えるだけ考えて、どう足掻いても、実行不可能だからと棚に上げていた案を口にする。
「少し前…『怪盗』が創って消した世界をサルベージして、借金返済まで維持し続けろ。他は俺が何とかする。」
「!…出来るみたいです。たまには役に立ちますね。」
「よし。ならこの契約書にサインしておけ。反故にされても困るからな。ペンはこれを使え。」
「そうですね…分かりました。」
心なしか嬉しそうに呟きながら、俺が渡した契約書をペンで、サラサラと書く女を他所に俺はポケットからスマホを取り出し、電源を入れた。
佐藤 楓が俺の手に落ちたのなら…問題は解決した様なものだ。後は、メンツを集めさせる誘拐役……そうだな。
堅物そうなルーレットの女神か何だかはともかく、ふわふわしててチョロそうなアイツ…
「これでいいでしょうか?」
「ああ……契約成立だ。」
泉様とかなら、快く引き受けてくれるだろう。ついでにここに滞在してる『パン屋』も使えそうだ。ついでに交渉しておこう。
「あの。もうサルベージ?は終わって、再構築が完了したらしいんですけど…月面に」
「?そう焦るな。準備が整ったら声をかける。」
それと同時並行で、俺の貴重な金を惜しみなく使って購入したVR世界を造った機材も、全て売却する手筈を整えておくとするか。アテはないが……
「いや待て…銭湯の中にある機材をあちら側へ送る事は出来るか?」
「ええと…可能らしいですよ。やっておきましょうか?」
「よし頼んだ。それが終わって、他のメンツを送り込み次第…擬態させた状態で、俺を送ってくれ。座標は———」
これは予想外の展開だ。もしこれが上手くいけば…っと。油断大敵という言葉もある。気を引き締めて取り掛かるとしよう。
「分かりました………あれ。」
「どうした?」
「いえ……何でもありません。」
プロローグ また詐欺師は踊る————了