あらすじ
神々が地上を去って、九百八十七年。
七つの王国が争い、人が人の手で歴史を築く《人の時代》に、一人の少女の死体が発見された。
名もなく、身元も分からず、死因すら不明。
ただ、その少女には――**心臓が二つあった**
王立学術院の遺物調査官エリアス・クロウが目にしたのは、死後三日を経ても脈打ち続ける白い心臓と、その表面に刻まれた神話時代の紋章。
その意味は、《帰還》。
そして同じ夜、千年前に最後の神が死んだと伝えられる《世界の墓》から、一本の白い光が天を貫いた。
北方では、人々が姿を消す。
王宮では、処刑された男が遺した謎を一人の王女が追う。
国境では、不可解な侵攻命令を受けた帝国軍が動き始める。
聖都では、神に仕えるはずの教会が「神への祈り」を禁じる。
王国、帝国、教会。
互いに異なる思惑を抱く者たちは、まだ知らない。
九百八十七年前、神々はただ「去った」のではない。
歴史は改竄されている。
世界は何かを忘れている。
そして、人類が忘れ去ったはずのものが今、再び鼓動を始めている。
七つの心臓。
七つの封印。
《世界の墓》で眠る、巨大な何か。
これは、神の帰還を待ち望む物語ではない。
かつて神を殺した人類が、もう一度「神」と向き合う物語。
そして後世に《神還りの夜》と呼ばれることになる、あの夜から――
九百八十七年間続いた《人の時代》は、終焉へ向かい始める。